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2017年1月10日 小尾隆の日誌 本館
窮屈な言葉、自由な音楽
ある方がブログで最近のニール・ヤングに関して、ポリティカルな意識は解るけど、かつてあったようなメロディが乏しくて音楽的な魅力は今ひとつと書かれていた。また本当に危機的な状況ならば音楽どころではないのでは?とも。すごく正直な意見だと思った。ロック・ファンというのはとかく”生き様”を至上価値として重視し、ディランやヤングならどんなつまらない作品でも一生付いていきます!的な人たちが多い。またそうした態度を貫くことがロックだと勘違いしている。その部分ぼくは少し違うんだよな。たとえ偉大なディランでもヤングでもエリック・クラプトンでも、駄目なアルバムを出したらちゃんと指摘する。そういう批評精神をぼくは大事にしたい。もう少し観点を換えてみるなら、多くの優れたアーティストたちが20代に瑞々しい”名盤”を生み出したことは偶然ではあるまい。最も感受性が強く、また吸収する力もある時期にレコーディング・アーティストでいられた彼らの幸せを感じずにはいられない。むろんベテランになっても過去の栄光に溺れることなくクリエティヴィティを発揮している音楽家はいる。ぼくの知るところでは『ニューヨーク』のルー・リード、『センチメンタル・ハイジーン』のウォーレン・ジヴォン、『COYOTE』の佐野元春などだ。それらはぼくにロックであることの価値を改めて問い掛けてくる傑作だった。むろん個々の音楽家の”手癖”やワンパターンを愛おしく思う時はある。それは一人の人間はそれほど変われないのだという生きた証明であろう。新しい作品がたとえ過去の模倣であったとしても、愛するアーティスト/バンドはぼくにも沢山いる(例えばジョン・フォガティやデイヴ・エドモンズ)それでも、もう一人の自分は冒頭のブロガーさんに共感するのである。今日たまたまあるフォーク・シンガーのFBを読んでいて、嘘寒くなった。その方は自分のアクースティック・ギターに「大きな変化は小さな願いから」といった旨のステッカーを貼っていた。彼にとってはウディ・ガスリーに似たそれを模したのだろう。しかしそうして貼られた標語より、もっと豊かにイメージを喚起し、聞き手を遥か遠い土地へと誘っていくのが音楽の役割ではないだろうか? 窮屈過ぎる言論が跋扈する2017年の初めに、ぼくはそんなことを考えてみた。
 
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小尾隆
(オビ タカシ)
音楽著述業/1958年東京都生まれ。1990年から自分の歩調で執筆活動を続けている。代表著作に『Songs-70年代アメリカン・ロックの風景』 (1997年)があり、増補改訂された同書の2007年版が日本図書館協会の推薦図書に指定に。
趣味は大衆文学とウォーキング。ギタリストではデイヴ・メイソンやヘンリー・マカロックなど、”遅弾き”の人がとくに好きです(笑)。
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