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2016年10月16日 コラム
[コラム] ボブ・ディラン、音楽と文学の間
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ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞。長らくノミネートが取り沙汰されていたから(ディランのファンのお約束−その凄さを説明するときに「ノーベル文学賞にノミネートされていて」と言う−)、とうとうこの日が…という。自身もその影響を隠さない村上春樹もナットクでしょう。物事には順序というモノがある。いまこの時代、このタイミングだと思うと、ジャストですよね。資本主義が先鋭化し、マネーゲームや権力闘争に明け暮れる…おいおい、アンタそれでいいのかい?っていう問いかけが常にディランにはあった。
 
しかしタイムリーな国内報道を見てズッコケた人は多いのではないだろうか。フォークの神様、とか、ミュージシャンで詩人の、とか。間違っているわけではないけれど、何かズレている。つまりディランを知らないということだ。そもそもズレまくっているNHKなんかも酷いレベルで「昔聴いてました、あの頃は革新的だったなぁ〜」とかいうコメントを延々垂れ流していて、メディアの作り手も受け手も、誰も知らないんだなあ、と苦笑してしまった。結局「レコードコレクターズ誌」的な方々のご登場を願うほかない、という(笑)。そうそう、小室哲哉が受賞を予言していた、という記事にも失笑してしまった。ああいった20世紀少年世代ならノミネートの話は常識だった。むしろ桑田佳祐の方がディランが来る、ってのを無意識的に予言していたと思う。「ヨシ子さん」みたいな、桑田さんの脳内をドロっと垂れ流したような作品にやたらディランが出てきていたから。こういうの今の時代に受けないよな〜と思いつつ、好きすぎて出しちゃった感じ。
 
音楽と文学を混同するな、とか、文学が文化の中心だった時代が終わり、音楽家が文化の中心になった時代を象徴する賞(だがその時代の終わりをも無情に宣告する)とか、色々な読み方ができるように思うけれど、ぼく自身としては、80年代的なる消費一辺倒文化リヴァイヴァルの終焉、への一歩だと踏んでいる。50〜60年代が80年代にリヴァイヴァルし、60〜70年代が90年代にリヴァイヴァルし、80〜90年代が00〜10年代にリヴァイヴァルし、という大衆文化現象があるけれど。これは親から子へ、という世代の文化再生産としてもごく自然だと思う。となるとコレは、一面的にケーハクとみなされる80年代のそのまたリヴァイヴァルの終焉?時代は「言葉」あるいは、ファッションではない「哲学」を再び求め始めている、ということなのでは?
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ディランとビートルズ、ってのが何だかんだ、ロックの基本だと思う。古典的図式で言えばサウンドと詩、アメリカとイギリス、その相互作用。アイ・ラブ・ユー、ユー・ラブ・ミーのロックが、ディランと出会って、物語性や重層性、多義性を帯びていくわけで。ジョン・レノンがディランに出会って詩の世界を変えたという有名なエピソードもある。ディランが血肉化させていたフォーク・ミュージックには、パフォーマーを時代を超えた語り部に憑依させる伝統があった。
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しかしそんな彼の近作がジャズ・スタンダード集、という人を食った感じも最高だ。本人は受賞のニュースに一瞬ニヤッと笑ったかも知れないけれど、たぶん彼の音楽活動を変えるモノでもないだろう。スタンダード第二弾『Fallen Angels』は輸入LPで入手した。丁寧な歌がまた、沁みる。
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そして、今一番聴きたいと思えるのが1995年の『MTV UNPLUGGED』の2枚組LP。私的にはリアルタイムで追いかけ始めた頃の新譜だから思い入れも深い。はじめは貧乏旅行の終盤、ロンドンの今はなきHMVで5ポンドくらいのディスカウントでカセットを買った。コレ、再発LPもあるけれど、そっちは音が良いか保証できない。というのも、クラプトンの『UNPLUGGED』を信頼する友人の所有するEU盤LP(90年代のプレス)で聴かせていただき、CDを軽く上回るその音の良さに大感動して近年の再発LPを買ってみたところ…全然ダメだったから。ディランの方も90年代のオリジナルLPの音は素晴らしい。ディランのアコースティック・セットを一列目で聴いているような臨場感がある。
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いしうらまさゆき
武蔵野発のシンガー・ソングライター、音楽雑文家。1979.10.5 東京生。2005年から1万枚を超えるライブラリーから選び出したレコード&CDレビューを中心としたブログを運営し、レコードコレクターとしてピエール瀧氏の番組 『コミック牙』内のコーナー『DJ TASAKAのレコード供養』などに出演。Records Are Like Lifeを実感するべく、せっせとレコード屋に通う毎日。
 
2011年にエレック・レコードのスタッフを迎えた’70年代フォークのオマージュ盤『蒼い蜜柑』(元ピピ&コット金谷あつしProd)でデビュー。2014年にはラッパーEARVINとの異色共演を含むフォーク・アルバム『語りえぬものについては咆哮しなければならない』(馬下義伸プロデュース)をリリースし、文学的な歌詞の世界と’60〜’70年代を想起させるウェルメイドな楽曲群が数々の音楽誌で高い評価を得た。2015年9月にはバンドスタイルによる4枚目『作りかけのうた』(MASH RECORDS [ウルトラ・ヴァイヴ])をリリース!
 
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